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全学教育改革と英語教育改革

1907年の建学以来、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念のもと、多くの指導的人材を輩出し、世界的に卓越した研究成果をもって人類の知の地平を拡大し、未来社会へ向けた変革・イノベーションを先導してきました。
2018年11月に策定した「東北大学ビジョン2030」では、教育・研究・社会連携の好循環を実現し、社会とともに成長する大学として、最先端の創造と大変革への挑戦を表明しております。

東北大学特任教授の岡田毅先生が、同学の全学教育広報「曙光」第52号(2021年秋号)に寄稿された記事を、掲載させていただきます。

まえがきとTOEFL®テストについて

令和4年度に東北大学の全学教育が歴史的な大改革を迎えます。本稿は、令和元年度から学務審議会外国語委員会の構成員が中心となり取り組んできた英語教育改革の概略と、その全学教育全体の中での位置づけに関して述べるものです。なお、英語教育の改革に伴う新しいカリキュラムに基づく教育は、全学教育改革のスタートに先行して令和2年度から既に段階的に始まっています。

全学教育の英語教育では、TOEFL®テストの理念を中心に据えたカリキュラムと教材を策定し、すべての英語担当教員が連携を取りながら学士課程前半における全学生の一般的学術目的のための英語(English for General Academic Purposes : EGAP)力の育成を目指しています。

本稿の内容理解の手助けとして、代表的な国際標準の英語試験であるTOEFL®テストとTOEIC®テストとはどのようなテストなのかを概観してみましょう。TOEFL®テストもTOEIC®テストも、非英語母語話者の英語運用能力を測定するためのテストであることに違いはありません。ただ、TOEFL®テストは、簡単に言ってしまえば、英語圏の大学に入学し、そこで学ぶための英語力を測定するのが主な目標であるのに対して、TOEIC®(Test of English for International Communication)は、主にビジネス環境での英語力を測定するものです。この2つのテストは米国ETSが開発し提供しています。TOEFL®テストは1964年から実施され、世界150以上の国々の11,500を超える大学や高等教育機関で認められており、英国を中心に開発されたIELTS(International English Language Testing System)と双璧をなす世界標準のテストです。日本国内でのIELTS受験者数は年間4万人前後に対してTOEFL®テストの受験者は年間24万人を超えると言われます。本学で実施しているTOEFL ITP®(Institutional Testing Program)テストは国内500以上の教育機関で活用され、年間約18万人以上が受験しているものです。受験の結果はレベルや合否ではなく3つのセクション毎のスコアと換算された総合スコア(310-677点)の形で実施教育機関と受験者にフィードバックされます。スコアで非英語母語話者としての能力が分かるということは、学生自身にとって学習目標や改善点の発見に役立つのみならず、実施母体である本学にとっても指導すべきスキルの選定やカリキュラム策定、教材作成、教育成果の可視化と評価などに対して大きな意義を持つものです。TOEFL ITP®テストのスコアは教育機関内限定で利用され、TOEFL iBT®テストスコアと公式な互換性はありませんが、海外の協定大学や大学院への留学の際には重要な指標として活用されます。因みに、平成30年度のTOEFL ITP®テストの日本人大学生の平均スコアは468.54で、ヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Frame work of Reference for Language : CEFR)のA2とB1の境界付近です。令和2年12月の本学の平均スコアは510.9で、これはCEFRのB1、TOEFL iBT®テストでは61-79のバンドに位置します。この510.9点という平均スコアは過去最高のもので、コロナ禍のオンライン授業環境の影響等他の要因も考えられますし、新カリキュラムの直接の成果と判断するのは時期尚早かもしれませんが、英語教育改革に携わる全教員にとって大きな励ましとなるものであり、ポスト・コロナ期のスコアの推移にも注目しているところです。また、ワーキンググループではスコア550点以上を一つの目標に掲げており、このゾーンの学生数の経年推移などの詳細については各種の報告書を参照ください。

また、欧米を中心とした高等教育機関で学べる英語能力測定を前提としていることから、TOEFL®テストのコンテンツはCritical Thinking(批判的・論理的思考)に基づいた論理的な展開や理念で構成されています。したがって、学術的な分野での英語能力はもとより、世界規模のビジネスの場でもTOEFL®テストで培われた能力は大きな役割を果たすこととなります。研究型大学としての東北大学の英語教育で上記のEGAPを中心に据えるのは当然ですが、同時に「TOEFL®テストかTOEIC®テストか?」という議論に終止符を打って、TOEFL®テストに焦点を当てている理由はここにもあります。若い学士課程の学生たちにとって、大学での日常(講義・演習・課題等はもちろんのこと、友人関係や「大学生として」の)生活が日本語だけではなく英語でも営めるための基礎的な能力、つまり学術の世界の入口に立つ英語力の測定に最適なテストがTOEFL®テストであり、その理念に基づいた英語教育を組織として提供し運営する責務を担う本学にとってもこのテストは大きな意義を持ちます。

全学教育改革の理念と英語教育改革の関連

教養部廃止後の四半世紀以上に及ぶ本学の「全学教育」の変遷と、令和4年度からの大改革について本稿で触れる余裕はありませんが、全学教育と英語教育の改革の共通点を煎じ詰めて言えば、肥大化したサイズの見直し、制度運用上の諸問題(制度疲労と呼べるかは別問題として)の解消、ではないでしょうか。

英語教育の改革の歴史については別の所で詳述する予定ですが、今回の改革では

  • (1)全体的な英語授業コマ数の削減
  • (2)統一的な理念に基づいた組織的な教育体制の構築
  • (3)時代のニーズに柔軟に応えることのできる持続的な検証システムの設計

がその大きな特徴として挙げられます。具体的には

  • 習熟度クラス別編成と評価基準の策定
  • 学生が身につけるべきコア・スキルの選定と統一カリキュラムへの反映、シラバス中の統一文言の指定
  • 独自教材とETS発行の公式ガイドブックの全学共通教科書としての指定
  • 教科書補助資料としての電子教材の開発と公開
  • 授業担当教員へのFD等を介した教育目標の周知と協力要請
  • 学生および担当教員からのフィードバック収集と分析
  • TOEFL ITP®テスト実施結果の分析と公開
  • 令和4年度入学生への2年次からのe-learning導入
  • 教育効果の検証と公開

等が推進されます。

また、英語教育改革は本学の初修外国語教育とも連携を深める契機となるべきであり、国際学士コース(FGLプログラム)とも連動しながら学生の履修範囲を拡大し、結果的に「学術の世界で外国語を駆使して活躍できる人材の育成」という大きな目標にも寄与しなければなりません。その意味で、全学教育で提供される外国語以外の多くの授業科目を通して、その内容は言うに及びませんが、学術情報の国際的な受信と発信用ツールとしての外国語、そして英語、という意識が若い学生たちの中に定着するような教育風土が培われる必要があります。一方で学外に目を向ければ、類似の英語教育理念を実践する国内の他大学等との協働や、本学が世界の大学で唯一覚書(MoU)を締結しているETSとの共同研究による連携の強化等が目標の射程に入ります。先述のように、TOEFL®テストは非英語母語話者の国際共用語としての英語の能力を測定するテストです。ですので、テストの受検者は母語話者と同様の運用能力が認められないからといって悲観する必要はありません。大切なことはTOEFL®テストの背景となる「学術の世界で学び国際舞台で自己を発信していくために必要なツールとしての英語」を身につけるという努力なのだと思います。余談ですが、ETS本部の役員の多くは非英語母語話者で、公式の場で交わされる英語も幅広い多様性を帯びた発音です。

新しい英語教育の目標・カリキュラム・教材・検証システム

TOEFL ITP®テストではTOEFL iBT®テストでのように受検者の「話す能力」「書く能力」を直接的に測定できません。しかし、ここでは詳述できませんがTOEFL ITP®テストで測定されるスコアはTOEFL iBT®テストに確実に投射されますし、それこそETSが自信をもっている部分です。しかし、学習者としての本学学生の中には、5月と12月に受検するTOEFL ITP®テストでスピーキングとライティングのセクションがないのに、どうしてこのテストが自分の英語力評価の指標とされているのか、という疑問を持つケースがあります。ですので、例えばParagraph WritingやNote-Taking While ListeningやFluency & PronunciationやPresentation Strategiesというような、新しいカリキュラムに実装されている合計24個のコア・スキルでは、「書く技能」と「話す技能」を学年次ごとに高めていくという工夫がなされています。

特に、学年末に近い時点で受検するTOEFL ITP®テストのスコアに沿ってクラス編成される2年次学生への英語の授業では、この2つを着実に高めていく工夫がなされています。

さらに、学部高学年次からの英語教育に向けて、TOEFL iBT®テストでの評価に耐えるようなスキルを育成すべく、2年次学生に対する「クラス内英語授業」に加えて本格的なe-learningを令和5年度の2年次学生から導入し学習の負荷を高めます。そこでは最低でも半期間に80時間近い取組の時間が要求され、「書く・話す」スキルの測定がETSの開発したシステムによって測定されます。また、全2年次学生の取組の状況や学習上のトラブルに対して、英語教員が常駐状態で対応できる体制も整備します。

このように、TOEFL®テストを、本学英語教育の理念の中心に据えるという事は、上述のカリキュラムや独自作成の教科書という産物に加えて、TOEFL ITP®テストの

  • (1)1年次の入学時点でのプレースメントテスト的な位置づけ
  • (2)1年次終了間近の伸長度測定
  • (3)2年次クラスの習熟度別編成
  • (4)2年次前半における4技能も含めた総合的な英語運用能力測定

のための活用につながり、それらが高学年次以降の(専門的)学術目的のための英語(English for (Specific) Academic Purposes : E(S)AP)への格好の橋渡しとなるはずです。これらの目標を達成するためには克服すべき課題も多く存在します。それらの中のいくつかは英語担当の委員会単独で解決できるものではありません。課題の中には

  • 4月の早い時期でのTOEFL ITP®テスト一斉実施に係る、個別入試や各種オリエンテーションを含む学事暦との連携
  • 秋学期開始時の習熟度別クラスの再編成
  • 一年間を通しての責任教育体制を実現し夏季休業期間中の指導を担保するためのセメスター制度の見直し
  • 1年次終了から2年次開始の間の学習を確保するための自学教材の開発提供

などが挙げられます。「1年次終了時にEGAPのどのような能力が伸ばせて(または不足していて)、2年次前期終了時にはEAPやESAPに繋がるどのような能力が獲得できたのか?」という学生視点の問いに応えるために、英語教育の提供体制を恒常的に見直す仕組みが必要であり、そのためには、例えばスキル別のきめ細かいアセスメントが実現されていなければなりません。統一の学内テストのような評価体制が整備されてはじめて、TOEFL ITP®テストという世界水準の測定基準でのスコアが大きな意味を持つことになります。

まとめと今後の方向

全学教育の大きな改革は、入学者選抜体制の大きな改革と表裏一体であるべきでしょう。また、全学教育という枠組みの中で、本学では若い学生たちにどのような魅力的な教育が提供されているかを入試広報と連動しながら発信していく必要があると思われます。受験生から見れば「入学して何が学べるのか、入学したら何が得られるのか、入学するためには何が求められているのか」が見える化されている必要があります。それが本当の高大接続に繋がるのかもしれません。

紆余曲折があり、入試への導入が見送られている英語の外部試験についてですが、単なる情報として提供するならば、令和3年8月21日から新しい英語能力評価テストであるTOEFL® Essentialsテストがリリースされました。このテストは15年以上前に導入されたTOEFL iBT®テストに続き、TOEFL® Family of Assessmentsの2番目に位置付けられている英語の4技能測定のためのテストで、利便性の高い受検環境と手頃な受検料が特徴です。本学では、令和2年7月に、スピーキング能力測定を備えた新しいデジタル版TOEFL ITP®テストのパイロット実施に協力し、8月には1,100名に上るボランティア学生の協力を得てデジタル版TOEFL ITP®テストを実施しました。12月の全員受検の従来型TOEFL ITP®テストも含めて、これらのテストの実施報告書は本ワーキンググループに上梓されています。

改革というものは革命ではありませんから、従来の方式や伝統に基づいて慎重になされるべきです。まして教育機関における改革の失敗は許されるものではありません。半面、改革がなされてしまえば、それでしばらくは安堵してしまうという体質も改められなければなりません。常にPDCAサイクルをまわしながら、柔軟で恒常的な改善が続けられる、持続可能で各種リスクに対しても強靭な教育体制を構築することが、本学の改革全体に求められているはずです。

 

関連文書
「英語教育改革推進ワーキンググループ報告書」(学務審議会、令和2年1月)「令和2年度TOEFL ITP®テストデジタル版実施報告書」(外国語委員会英語教育改革実施ワーキンググループ、令和2年9月)「令和2年度TOEFL ITP®テスト実施報告書」(外国語委員会英語教育改革実施ワーキンググループ、令和3年2月)(おかだたけし)

東北大学 岡田 毅先生

東北大学 学務審議会外国語委員会
英語教育改革実施ワーキンググループ副座長
高度教養教育・学生支援機構特任教授(研究)
岡田 毅先生

浜松短期大学講師、山形大学教養部・教育学部助教授、ロンドン大学バークベックカレッジ客員教授、東北大学大学院国際文化研究科教授を経て2021年より現職。東北大学教育研究評議員、国際文化研究科副研究科長、全学教育英語教育改革推進ワーキンググループ副座長等歴任。専門は英語コーパス研究および英語教育(特にeラーニング)。英語コーパス学会理事、日本ラーニング学会、英国応用言語学会等会員。

2022年2月掲載

上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。

 

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全学教育改革と英語教育改革

1907年の建学以来、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念のもと、多くの指導的人材を輩出し、世界的に卓越した研究成果をもって人類の知の地平を拡大し、未来社会へ向けた変革・イノベーションを先導してきました。
2018年11月に策定した「東北大学ビジョン2030」では、教育・研究・社会連携の好循環を実現し、社会とともに成長する大学として、最先端の創造と大変革への挑戦を表明しております。

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