関西外国語大学は太平洋戦争の終戦から3か月後の1945年秋に、「これからは世界中の人々が協力し合い、力を合わせて生きていく世の中にしたい」という想いを外国語教育に託し、創立されました。
開学以来「国際人の育成」と「実学教育」の実践を柱に、日本と世界をつないでおり、現在55か国・地域の395大学と協定を結んでいます。本学は世界というステージで活躍できる人々の育成に取り組んでゆきます。
関西外国語大学の小谷克則先生、内田真弓先生、国際交流部の北添竜大さんに、英語教育についてインタビューさせていただきました。
内田先生:関西外国語大学は1945年に「谷本英学院」として創設されました。以来、語学教育だけでなく、人文科学、社会科学や数理、データサイエンスなどのカリキュラムを導入し、時代の変化に合わせて常に進化し続けている大学です。
2023年4月に「国際共生学部」と外国語学部「英語・デジタルコミュニケーション学科」を新設しました。「国際共生学部」では、講義は4年間全て英語で開講します。人文科学、社会科学、ビジネス・経済学の3つの学問分野を中心とした外国人留学生との共学により、異なる文化背景を持つ人たちとのコミュニケーション力を養います。また、Experiential Learningの場として、グローバル社会の問題解決に向けたプロジェクト、留学、インターンシップなど、自発的な行動や学びを促す取り組みを積極的に展開します。Content-based Learningの教育を通し、多文化共生社会において新たな価値を創造できる人材育成を目的としています。
外国語学部に新設された「英語・デジタルコミュニケーション学科」は、英語と情報科学を掛け合わせたカリキュラムとなっています。英語力はもとより、動画制作、デジタルアート、プログラミングといった実践的なデジタルスキルを修得していきます。メタバース空間での体験型学修を実現する施設「Hello, World.」も新設します。こうした最新の施設を活用して仮想世界での学びを体験することで、語学だけではなく、最新のデジタル技術の活用を教養として学び、次代のソリューションを生み出す力を養成することを目的としています。
2024年4月には、外国語学部に「国際日本学科」が新設されます。「国際日本学科」は、英語力を備えながら日本語や日本の文化に精通したグローバル人材を育成していきます。同時に、短期大学部でも新たに「未来キャリア英語学科」の開設が予定されています。「未来キャリア英語学科」は英語のコミュニケーション能力を磨くとともに、資格の取得を目指せるカリキュラムを通して、社会で必要とされる職業人を育てていくことを目的としています。
―留学生と「衣・食・住」をともにする教育施設「GLOBAL COMMONS 結 -YUI-」
内田先生:御殿山キャンパスの正式名称は「御殿山キャンパス・グローバルタウン」といいます。「GLOBAL COMMONS 結 -YUI-」(以下、「結」)という教育施設を中心に、海外留学生と日本人の学生が共に暮らし学ぶことができることから、キャンパスを一つの街と捉えているのです。講義だけではなく、この空間で生活しながら新たに様々なことを学んでほしい、という思いが込められています。「結」には現在約650人の入居者がおり、日本全国から集まった日本人学生と、世界約30の国と地域からやってきた海外留学生が共同生活を送っています。日本で生活をしながら英語でのパーソナルコミュニケーション力を伸ばしていけるというのが魅力です。さらに、多様な文化・価値観を体験することで、異文化に対する興味や理解を深めることができます。
「結」では、レジデント・アシスタント(RA)として日本人学生30名ほどが、入居者が快適かつ充実した共同生活を送れるよう、さまざまな支援を行います。「御殿山キャンパス・グローバルタウン」を一つの街、多様化する地域に見立てて、地域社会運営のトレーニングにもなっていると考えています。
小谷先生:本学全体では"大学生に必須の英語力を高めること、また英語「で」特定の分野について学ぶこと"に注力しています。また、学部やプログラムの展開によっては、職業人として求められる英語力の修得を大きな目標としています。
留学についてですが、本学、特に英語キャリア学部の場合はいわゆる "語学留学" はメインの留学ではありません。理由は先ほどの「結」の紹介でもありましたが、大学生として必要とされるコミュニケーション能力は学内で身に付けることができるからです。また、本学部の特色にもなりますが、北米、カナダ等の大学と本学との共同開発プログラム「Super IESプログラム」を通じ、大学生に必須のコミュニケーション能力を身に付けることができます。他学部・他学科でも、1、2年生で本学において個人的・社会的なコミュニケーション能力を高めたのち、留学先大学の学士課程の講義を受講する1年間の留学に参加する学生が多くいます。留学先で取得した履修科目の単位は本学で認定できますので、1カ年の留学をしても4年で卒業できる仕組みになっています。また、長期留学では、海外協定校に2年間在学し、本学と協定先大学の学位取得を目指すダブル・ディグリー留学、さらにもう1年の計3年間の留学で本学の学士とアメリカの学士および修士の3つの学位を目指す大学・大学院学位留学まで多様な留学制度を整えています。従って、有意義な留学を可能とするためにも、学生の英語力をいかに学内で育てていくか、というところに力を注いでいます。
内田先生:英語国際学部は他学部と少し異なり、英語に加えて中国語を必修としています。学部発足当初、1学期間は英語圏、もう1学期間は中国へ留学するプログラムがベースであったため、新しいカリキュラムにおいても2~3年次生の間に語学留学に行くことが基本の流れとなります。近年では "1年以上の留学に行くように”と勧めており、それにチャレンジする学生も増えてきています。そのため、本学部も1年次生の間は、留学先でより高いレベルのクラスで英語学修ができるよう、可能な限り、英語力やコミュニケーション能力を身に付けられるような授業展開にしています。
―留学という部分で国際交流部のみなさまからもお話を伺えますか
国際交流部 北添さん :新型コロナウイルスのパンデミック前は年間2,000名近くの学生を海外の協定先大学に派遣しておりました。1970年頃から続けてきた国際交流が2年間止まってしまうという予期せぬ事態になっておりましたが、幸いにも2021年の秋からダブル・ディグリー留学が再開したのに続き、昨年度はほとんどのプログラムも再開し、1,200名以上の学生が参加しました。留学希望者は引き続き増加傾向にあり、本学の学生は留学に対して非常に興味や意識が高いと言えるのではないかと思います。
また、約1か月~1学期間の短期留学において、これからは語学だけではなく、例えば "語学+SDGs" といった特定のテーマを設定して、語学を学びながらグループワークを通して課題解決に向けて取り組んだり、プレゼンテーションやSNSといった情報発信ツールを活用して、自分の考えを発信する力を醸成したりできるようなプログラムを、英語国際学部を中心に展開する予定です。
内田先生:本学では1980年頃から40年以上にわたりTOEFLテストを活用しています。留学はアメリカへの派遣が大多数を占めていたこともあり、当時からTOEFL ITPテストを活用してまいりました。
現在では学内で年間13回ほど実施し、延べ12,000人の学生が受験しております。これらの試験結果は、派遣留学選考プロセスの一環として、一定のスコアがないとプログラムによっては申し込めないというような形で用いています。また留学プログラムだけでなく、学内の本科の講義においても、All Englishで行われる科目については、TOEFL ITPテストのスコアを要件として履修者の選抜を行なっております。例えば、全学共通の科目である関西外大流グローバル人材育成プログラムでは、外国人留学生とともに英語で履修するため相当な英語力が必要になりますので、本プログラムを受講できるかの目安として、TOEFL ITPテストのスコアを設定しています。さらに、本学では教員を目指す学生も多いので、教職課程の履修の継続要件として、TOEFL ITPテストのスコアを学年ごとに設定しています。
TOEFL ITPテストを利用している理由ですが、高校までに勉強してきたテストの問題形式に馴染みがあるという点と、リーディングとリスニングといった2つの能力の測定のみであっても、4技能の測定において一定の妥当性が確認されている点が挙げられます。さらに、資格試験ですので学生自身が自学自習をする必要がありますが、TOEFL ITPテストはETSで公開されている模擬試験を活用することで苦手な箇所の判定が簡単にでき、学生自身で目標を立てて勉強を進めていくことができます。年に13回実施していますので、複数回受験をすることによって、自分の弱点を自分で把握することができますし、その弱点を重点的に強化することによって、より効果的な英語学習が可能となります。
またテスト運営という点において、本学においては数百人単位で一斉に受験できることもTOEFL ITPテストを選択した理由の一つです。
TOEFL iBTテストについては、本学での一斉受験というのは実施しておりませんが、留学派遣先からスコアの提出が求められる場合が多々ありますので、とくに1か年以上の長期留学を目指している学生には各自で受験をするように推奨しています。またごく一部ですが、「関西外国語大学グローバル人材育成特待生奨学金」を受給している学生は、受給の継続要件として、TOEFL iBTテストを毎年受験して一定のスコアを満たすように求められています。この場合は毎年受験する必要があり、学生が留学をしている場合もあることから、コンピューターがあれば世界中どこでも受験ができるTOEFL iBTテストを利用しています。
―貴学への受験を検討している高校生へのメッセージをお願いします。
小谷先生:英語に対して「自信が持てない」と思われている方が多い印象です。特にTOEFLとなると難しいテストという印象を持つ人が大多数のように思います。TOEFLテストは合格不合格で測定するものではなく、どんなレベルであっても解ける問題がちりばめられていて、自分の能力に合った問題を解いていけばそれなりのスコアになるという試験です。でも全問正解型の試験に慣れていると、6割程度解けた場合でも「解けた!」というポジティブな捉え方ではなく「6割程度しか解けなかった」とネガティブに捉えてしまうことがあるので、まずは模擬試験(※)を受験し、自信を持ってもらいたいと思います。そのためにも、自分が目指しているTOEFL ITPテストのスコアに必要な能力がどの程度なのかを把握するために、同じ模擬試験を繰り返し受験してみてください。必要な能力がつかめればゴールまでの道のりが分かりますので、まずは模擬試験を受験することをおすすめします。
また「難しいテストではない」とお伝えする中で、TOEFL ITPテストを受験してから3、4日後の私の授業で、「今回のTOEFLのリーディングのトピックについてグループで考えてください」と学生に尋ねると、大抵みなさん「えっ?」ってなるんですよ。試験だと思って文章を読んでいるから、"TOEFLテストは学士課程において問題なく対応できるかが問われている" ということに気が付けずに、多くの学生が3、4日前の文章が思い出せなくなっています。留学先の大学の学士課程において問題なく対応できるかが問われる試験であるということを忘れずに受験するようにしてください。
内田先生:TOEFLの授業を担当していますが、TOEFLの文法問題は正直そんなに難しい文法項目は扱っていないはずです。使われている単語は難しいですが、文の構造を見た時に、本当にシンプルな説明で解決できる問題が多い。つまり英語の構造の基本を押さえておけば、あの文法問題は解けるはずです。ところが、高校まででやってきた勉強の仕方や文法の授業と、TOEFLの文法の問題の提示のされ方、使われている単語のレベルなどが違った時点で「全然違うもの」と捉えてしまう傾向があり、もったいないなと思います。TOEFLの文法を修得して、しっかり文の構造を取れるようになれば、リーディングにも応用が利きますし、もちろんリスニングにも応用が利きます。TOEFL ITPテストでは行われていませんが、ライティングにおいても基礎がないと文章が書けません。文法の理解は全てに繋がっているので、私は授業では文法問題を重視してやっています。また長文は単語が難しいため敬遠してしまうところがあるのですが、いろいろな分野の良いところを引っ張ってきている内容を問題にして並べているので、読むだけでいろいろな知識が入ってくるんです。例えば、アメリカのテストですので、アメリカの歴史や文化などを扱った内容の長文が出てきます。そこをきっかけに「日本語でこの分野のことを読んでみようかな」など、知識を増やしていってもらいたいと思います。また、よく「国語は苦手だけど英語は好き」と言う学生もいますが、国語ができないと英語の力もある程度までしか伸びませんので、高校生のうちにたくさん本を読んで、国語力を付けて大学生になってほしいと思います。
内田先生:2021年度の大学全体の就職実績は、95.4%となっています。2019年度から2021年度の卒業生のうち、商社関連に744名、ホテル業界に500名、航空業界に330名(うち102名が客室乗務員)が就職しました。客室乗務員については全国1位の実績です。教員も多く、203名となっています。今年度以降はこの数もどんどん回復していくと思いますし、英語を使った仕事に従事する学生が多いことがこのことからも伺えます。さらに、長期留学を経た卒業生の中には、外務省に入省した者やテレビ局のNY支局でプロデューサーとして勤めている者、公用語が英語の楽天グループなどに就職した卒業生もいます。英語国際学部ですと、英語と中国語が必修で、ある程度の運用能力を身に付けて卒業しておりますので、それを生かして鉄道会社に就職している者もいます。先ほどから述べておりますが、語学力はもちろんですが、コンピテンシー・ベースの教育を行っておりますし、またキャンパス内外で異文化体験を日々積み重ねておりますので、どのような仕事をする上でも本学で身に付けた能力が生かされているのではないかと思います。
小谷先生:最近は日本の経済状況もあるのかと思いますが「海外で働く」ことを選択する学生も出てきています。例えば、オーストラリアの大学で学位を取ると労働ビザの取得ができるので、現地で仕事を見つける学位留学を選ぶ人が増えだして喜ばしいです。学生自身がいろいろと調べて本学の留学を選んでくれているのだと実感しています。多様化するニーズに応えるという意味で、キャリアセンターでは、留学中の学生さんとオンラインでインタビューをした上で、就職支援や海外インターンの受け付けをしてくださったりと、我々の教育の成果というのが、留学でもインターンでも目に見える形で表れ、海外での就職に対しても着々と整ってきていると思います。
―どうもありがとうございました。
※TOEFL ITP®テストの過去問題集「TOEFL ITP® Practice Tests」
関西外国語大学
英語キャリア学部 英語キャリア学科・学科長
教授 小谷 克則 先生
関西外国語大学大学院外国語学研究科英語学専攻博士課程後期修了(英語学博士)。情報通信研究機構けいはんな情報通信融合研究センター自然言語グループ(特別研究員)、アジア太平洋機械翻訳協会(理事)などにおいて自然言語処理研究に従事してきた。現在、私立大学協会大学教務研究委員会(委員)において教務研究に従事する。2006年から関西外国語大学外国語学(講師)、現在、同大学英語キャリア学部(教授)。専門は教育工学、言語学。
関西外国語大学
英語国際学部
准教授 内田 真弓 先生
学習院大学文学部英米文学科卒業後、関西外国語大学大学院外国語学研究科英語学専攻博士課程前期修了(英語学修士)、同博士課程後期単位取得満期退学。ECC 外語学院、大阪医専、森ノ宮医療学園専門学校、大阪経済法科大学、大阪キリスト教短期大学、大阪産業大学などの教壇に立ち、2013年から関西外国語大学・国際言語学部(現・英語国際学部)講師。2022年4月同准教授。専門は言語学、翻訳。
2023年5月掲載
上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。
関西外国語大学は太平洋戦争の終戦から3カ月後の1945年秋に、「これからは世界中の人々が協力し合い、力を合わせて生きていく世の中にしたい」という想いを外国語教育に託し、創立されました。
開学以来「国際人の育成」と「実学教育」の実践を柱に、日本と世界をつないでおり、現在55カ国・地域の395大学と協定を結んでいます。本学は世界というステージで活躍できる人々の育成に取り組んでゆきます。
2022年1月掲載
岡田毅先生
2020年10月掲載【動画インタビュー】
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2019年1月掲載
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塚本伸一副総長